不当利得(過払金)返還請求訴訟における裁判所の現在の傾向その1

こんにちは、司法書士の河内謙治です。

過払金返還請求事件における現在の裁判所の

傾向をお話ししようと思います。

 

最高裁平成19年6月7日判決(判タ1248号113頁)は、「基本契約は、

同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本

に充当した結果、過払金が発生した場合には、上記過払金を、弁済当時

存在する他の借入金債務に充当することはもとより、弁済当時他の借入金

債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する

旨の合意を含んでいる」と判示して、過払金充当合意が基本契約の中に

存在することを認めました。

これにより、過払金が発生した後、取引の空白期間が何年あろうとも、

基本契約に基づく取引である限り、充当が認められることになっています。

 

ところが、現在の裁判所はこの判決のことをすっかり忘れてしまっているのか、

空白期間が1年を超えているものに関して、基本契約を空白期間の前のものと

後のもので、それぞれ別の基本契約であると認定して、前の取引から生じた

過払金は時効によって消滅している(空白期間の前の最終の取引が10年経過

しているものに関して)

と考えることが多くなっています。

 

よって、取引が一つの基本契約に基づいて行われていたものであり、空白期間が

いくらあろうとも、基本契約が一つである限りにおいては、過払金返還請求の
消滅時効は、最後の取引から計算するものであるということを主張・立証して

いかなければならなくなります。

つづく